北領とは、北神半島の北西に連なる西楓列島、夏島列島を指します。行政区分では西楓公国と北嶼公国にあたります。
西楓列島、夏島列島は共にプレートの沈み込みに伴う火山活動や地殻変動で形成された島弧です。
西楓列島と夏島列島東部では北洋東プレートが北極プレートに、夏島列島西部では北洋西プレートが北極プレートに沈み込んでいます。
島弧なので火山が多く存在し、地震がよく発生します。
夏島列島はかなり高緯度にあるため、年中を通して寒冷です。山地を中心に多くの氷河が存在します。
氷期には列島全体が氷床に覆われていました。その名残として列島のあらゆる所に氷蝕地形があります。特に大きな島では峡湾(フィヨルド)が卓越し海岸線が非常に細かく入り組んでいます。
また無数の丸い沼の様な永久凍土特有の地形が見られます。
標高500mを超えるような山岳地帯では今でも殆どが雪氷に閉ざされています。
西楓列島でも北部や高所で氷蝕地形があります。
北領はその名の通り高緯度にありますから寒冷です。
西楓列島は南部で冷帯湿潤気候、北部でツンドラ気候です。
夏島列島は沿岸部や低地でツンドラ気候、高所では氷雪気候です。
ツンドラ気候、氷雪気候の地域、つまり修正ウラディミール気候区分(ケッペンの気候区分)でいう所の寒帯地域は気温が10℃以上になる事が殆どありません。
一方、冷帯である西楓列島の南部では気温が20℃を超える事もしばしばあります。
領列島共に海の作用を受けやすい地域なので冬の気温低下は控えめで、本土と大差無く-20℃程度です。只、夏島列島の大きな島の内陸では-40℃以下になる所もあります。
冬になると夏島列島の大部分は流氷に囲まれます。
夏島列島西部は年中降水が少ない地域です。
夏島列島東部では冬は降水が少ないです。夏は低気圧の通過が多い為、雲が多く一定の降水があります。
夏島列島では海水温が低い為に蒸発によって大気中に供給される水分が少なく、本土で降るようなしっかりした雨にはなりません。夏島列島は多くの地域で年間降水量が500mmを下回ります。
西楓公国では定期的に低気圧が通過するので年間を通じて降水があります。特に冬は発達した低気圧に頻繁に晒される故に吹雪の日が多くなり、積雪も多くなります。年間降水量は1000mm弱の所が多いです。
西楓列島の低地では針葉樹を中心とした森林が形成されています。
主な樹種はトウヒ、トドマツ、カラマツ等です。
一方、西楓列島の高地や夏島列島は寒冷なため植生が乏しいです。
その中でも比較的温暖で植物が生育可能な地域ではツンドラとなっています。ツンドラでは主に苔や草、地衣類が地面の大方を覆い、低い灌木や針葉樹が疎らに生えています。
夏島列島のトゥカテク島ではこうしたツンドラ地帯も僅かで殆どが氷原や荒原といった無植生地帯になっています。
西楓列島南部、長白島以南では礼分来(レプンクル)人が主な住人です。
西楓列島北部、千種島以北では乳日(ニュビ)人が主な住人です。
夏島列島には様々な人種が暮らしています。
最も多いのは先住民の音取(ネトル)人です。音取人は島によって様々な文化や言語を使います。
セトゥスル島では玄人、列島西部ではクルシア人が一定数居ます。
北神人は両列島に少なからず居ます。
これらの島々が連邦の物になったのは最近ですが、それ以前から住んでいる北神人も少なくないです。
自給自足の生活をしている人も多いですが、彼らは決して文明から切り離されている訳ではありません。
人口希薄地帯である北領には都市らしい都市少ないです。
市は西楓公国長白市、北嶼公国タバオント市、北嶼公国ニヴハラグルズ市の三つのみです。
長白市は西楓公国の中心地です。
タバオント市は夏島列島の中心都市で古くから国際貿易の拠点として栄えていました。
ニヴハラグルズ市は連邦最西端のベイシ島にあります。軍港があり関連産業が経済を支えています。
北嶼公国の都市は、高床式の建築が並んでおり水道管やガス管が地上に設置されているという特異な都市景観が存在します。
この景観は永久凍土への対応から生み出されました。
建物内の熱が伝わり凍土が融解して地形が変わる事を防ぐ為に、建物を高床式にしています。
また凍土は混凝土並に硬く掘削が大変なので水道管、ガス管は地上設置になりました。
北領では漁業が最も盛んな産業と言えるでしょう。鮭、鱒、蟹が主な漁獲品目です。
寒冷な気候の為、農業生産は少ないです。
北嶼公国は近年牧畜が盛んになってきています。これは食肉用の馴鹿の飼養です。
この地での自給的馴鹿飼養は古くから行われていましたが、商業的馴鹿飼養が増えています。
北領の幾つかの港は貿易船等の寄港地となっており、船員向けの商役業も重要な収入源となっています。